国語が苦手
語彙(ごい)の習得方法を教えます。(発達障害)
ジャンプには「学習障害だから漢字を覚えられないのかも」「発達障害だから漢字が苦手なのかも」「WISCの数値が低いから漢字が書けないのかも」といった悩みから国語の指導を依頼されるご家庭がとても多いです。
発達障害だから国語が苦手?語彙不足が原因?
学習障害・発達障害だから漢字や国語が苦手なのでしょうか?
実際の教育現場でそういった子供達に漢字を教えている立場からみたとき、必ずしもそうではない原因で漢字を苦手にしている子供もかなりいることがわかります。根本をたどると、語彙不足、すなわちそもそも言葉を知らない、ということが原因で漢字が苦手になっているようです。
「語彙」とひとことで言ってもレベルは様々です。
そして語彙を身につけるために世の中には様々な語彙専門のテキストが存在しています。
しかしどのテキストも出てくる語彙が少々難しいように思えます。そしてどのテキストもだいたい1100~1200程度の言葉をあつかっているのですが、語彙に統一性がなく、しかも偏差値40台の中学受験を目指す6年生にとってあまり必要のない難しい表現が大半を占めていたりします。ジャンプの生徒さんたちは教科書の理解度を確認する学校のカラーテストで20点~50点くらいをさまよっている子も多く、「読解力」や「記述力」の前にそもそも言葉(語彙)を知らなくて書いていることの意味がわかっていない(わからないから読み飛ばしたりわからないまま読み進めている)子もたくさんいます。
そういう教科書レベルの語彙がまだ知らない(意味を知らない、意味は知っていても文章の中でつかいこなせない)状態だと、そのような市販の教材は難しすぎてなかなか頭に入りません。むしろ、もっともっと基本的なことばの理解を継続的に行っていく必要があります。
①語彙の問題集を5段階で評価
それでは、まず市販の「1200~」のような語彙の問題集を私なりに難易度5段階で評価してみます。
小学生にとって非常に難しい言葉を5、比較的理解しやすい言葉を1とします。
出版社Aに出てくる言葉(難易度5)
くさす、あつらえる、居直る、相対する、叙述、抽出、面従腹背、アイデンティティ、青写真、彼岸、一抹、てんてこ舞い、晴耕雨読、通読、悠久、鼎の軽重を問う、etc
出版社Bに出てくる言葉(難易度4)
くさわけ、あけすけ、いささか、いなめない、おうおうにして、冤罪、厚顔無恥、たけをわったよう、ぶすいな、めげる、リテラシー、ふれこみ、無味乾燥、etc
出版社Cに出てくる言葉(難易度3)
ういういしい、言わずもがな、共感、見聞、どんでん返し、野心、根こそぎ、未練、ひとえに、小春日和、自画自賛、ぞんざい、きょとん、インスピレーション、etc
②私立中学入試問題の語彙
次に偏差値40台の中学(首都圏模試の偏差値40~42の私立中5校の過去問から選んでみました)で実際に出題された入試問題の語彙をピックアップしてみました。
敏感、反射的、ぎくしゃく、こんがらがる、単純、寛大、横着、都合、目先、朝飯前、夢見心地、重宝、途方に暮れる、裏目に出る、etc
これらは難易度2~3だと考えます。
③入試問題の語彙が掲載されている割合
次に偏差値40台の中学で実際に出題された入試問題の語彙が、これら市販の語彙専門テキストにどのくらい掲載されているかを調べてみました。
~偏差値40台の私立中入試で出題された国語読解問題に出てくる本文中のことば~
4種類(出版社A・出版社B・類語辞典(出版社C)・出版社D)で調査してみました。
———————————————————–
出版社順に A B C D
敏感 × × × ×
反射的 × × × ×
ぎくしゃく × × × ×
こんがらがる × × × ×
単純に × × × ×
目にも留まらない × × 〇 ×
ひょいと × × × ×
眼中にない × × × ×
顔なじみ × × 〇 ×
機会 × × × ×
ターニングポイント × × × ×
驚異 × × 〇 ×
気さく × × × 〇
ずるがしこい × × × ×
寛大に × 〇 〇 ×
気長に × × × 〇
非情に × 〇 × ×
おおげさに × × × ×
かすかに × × × ×
絶大に × × 〇 ×
セールスポイント × × × ×
キーポイント × × × ×
チャームポイント × × × ×
途方に暮れる 〇 〇 〇 〇
横着 〇 〇 × 〇
あんばい × 〇 〇 ×
面目 × 〇 〇 ×
おどける × × × 〇
都合 × × × ×
目先 × × × ×
画期的 × 〇 〇 ×
普及 × 〇 × ×
挙句の果て × × × ×
裏目に出る × × × 〇
朝飯前 × × 〇 〇
へりくだる × 〇 × ×
集大成 × × × 〇
夢心地 × × × ×
紙一重 × 〇 × 〇
がぜん × × × ×
重宝 〇 × × ×
いきまく × × 〇 ×
掲載割合 3/41 10/41 11/41 10/41
結論「語彙テキストは低学年あたりから国語が苦手な子供にとってはまだ時期尚早である」
市販の語彙専門テキストには、偏差値40台前半の国語入試で出題されるような基本的な言葉は殆ど掲載されていないといえるのではないでしょうか。じゃあどうすればいいのか。
それが今回のテーマなのですが、個人的には以下の3つをお勧めしたいと思います。
1.習った漢字の熟語を多く読めるようにする
1つ目は、漢字の学習をする際に熟語の「読み」と「意味」をなるべく多く耳や目に残しておく方法です。
例えば、「横」という漢字は小学校3年生で習いますが、このときに「横」(音読みの「おう」)が付く熟語をなるべく多く読めるようにして(更には意味がわかるようにして)おくことです。横行、横転、横着、横断、横柄、横隔膜、、、たくさんありますね。そして同じ「おう」という音の漢字も同時に比べながら学習します。例えば同じ3年生で習う「央」や「負う」、2年生で習った「黄」1年生で習った「王」もまとめて復習したほうが効率良く学べます。
1年生で習う数字だってしかりです。「一」を習うときに「一」が入った言葉をなるべく多く子供の耳に残しておく。きちんと正確に覚えられなくても大丈夫です。
例えば「一生」「同一」「一人」など。「三」なら「三日月」「三味線」、「四」なら「四六時中」、「五」なら「五感」「三々五々」、「七」なら「七草」「七夕」「七福神」、「八」なら「八方美人」「八つ当たり」「八頭身」、、、たくさんありますね。
また、1,2年で習う漢字は基本的に訓読みを学びますが、その際に音読み同士の二字熟語も出来る限り目や耳に残しておくことが大切です。
例えば「見る」は1年生で、「聞く」は2年生で学びますが、3年生以降のテストに出題される「けんぶんを広める」という問題で「見聞」と書けるためには、そもそも「見聞」を「けんぶん」と読めるようになっておかないと書けないわけです。同様に「空」(そら)「白」(しろ)はどちらも1年生で学びますが「くうはくの時間」で「空白」を「くうはく」と読めて(ある程度意味も理解して)いないと書けないわけです。こういった「訓読みで聞かれると正確に漢字は書けるのに音読み同士の組み合わせの熟語だとどの漢字になるのか知らないから書けない状態」に3年生以降陥らないよう、あるいは現在3年生や4年生でこういった状況にある子供は、あらためて低学年の漢字の熟語読みから土台固めをしていくことが有効になります。
サンプルとして実際の3年生漢字テストを紹介します。
「送る」「運ぶ」がきちんと書けています。
しかし、「トラックでうんそうする」という漢字テストではどうなのか。ということです。
この「漢字を熟語とセットで読めるようにしておく」というのはジャンプの教師が普段から現場で実践している指導法です。
2.教科書に出てくる言葉のおさらい
2つ目は、国語の教科書に出てくる言葉を今一度おさらいしていくことです。例えば光村出版の教科書ですと最後に「語彙力を高める言葉の宝箱」というページがあります。
「人物を表す言葉」「事物を表す言葉」「考え方を表す言葉」「心情を表す言葉」の4つの分野ごとに分類されており、それが2年生~6年生の学年ごとに少しずつ難易度が上昇していくように紹介されています。
3年生 | ほがらか・りこう・こうひょう・あやふや・まるで~のよう・いっぽうは~・うちょうてん・やるせない |
---|---|
4年生 | 器用・ずうずうしい・二つとない・大げ・たとえ~だとしても・~にちがいない・こころがうごく・ほこらしい |
5年生 | ごうかい・せっかち・みずみずしい・重々しい・~の点から分類すると・~と思われる・会心・もの悲しい |
6年生 | 悲観的・~に明るい・うってつけ・抽象的・ここから~といえる・具体的には・心もとない・なごり惜しい |
3.日本語検定にチャレンジ
3つ目は日本語検定に向けて勉強してみる、という方法です。
2007年にはじまった試験で、日本語を正しく理解して使えているかをはかるテストとなります。もちろん日本人を対象とした検定で、日本語を学習している外国人を対象とした「日本語能力検定」とは全く別物です。
国語といえばまず漢字検定が浮かぶと思いますが、実は語彙を獲得するうえではこちらの日本語検定のほうがむしろ適していると個人的に思っています。
日本語検定は敬語・言葉のきまり、いろいろな言葉、言葉の意味、書き表し方、漢字、の6分野から出題され、特にこの「言葉のきまり」「いろいろな言葉」「言葉の意味」が語彙習得にピッタリな教材となっています。7級が小2レベル、6級が小4レベル,5級が小6レベルとなっており、偏差値40台を狙う国語が苦手な生徒さんにはまず7級からチャレンジしてもらいたいと思います。
以上の3つを紹介しましたが、まだまだたくさんの学習法やアイデアがあります。
いずれまたコラムでお話していければいいなと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。
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