緊張の正体
テスト=緊張してしまう?(発達障害)
この業界に長くいて、勉強が苦手な生徒さんたち、学習障害や様々な特性を持って学習面で困っている生徒さんたち、とたくさん関わってきて、わかったことがいくつかあります。その一つについて今回は話したいと思います。
よく「テストになると緊張して力が発揮できない」という生徒さんがいます。
では、この「緊張」はいったいなぜ発生してしまうのでしょうか。
いつもと同じクラスメイトと同じ教室でテストを受ける、そんな状況をみなさんも思い出してみてください。私自身、多少の緊張はあったと記憶してますが、よほど点数が落ち込むほどの緊張はなかったと思います。では本当の理由はなんでしょうか?
ここでは
1 学習の本質面
2 テクニック面
3 メンタル面
以上3つの観点からお話をしたいと思います。
1 学習の本質面
①平均点前後取れている生徒さんの「緊張」への対処法
②1ケタ〜30点くらいの点数で苦手意識のある生徒さんの「緊張」への対処法
と大きく2つに分けてお話したいと思います。
①平均点前後取れている生徒さんの「緊張」への対処法
結論からズバッと言います。
それは「緊張」ではなく、大半が「問題の種類の区別ができないことへの焦り」です。
特に英語は文法の区別ができていないために、結果が出ていない生徒さんは相当数いるはずです。今まで私が担当した生徒さんも問題集やワークで各文法ごとに勉強しているときはそこそこ解けはするのに、テストになると点がとれなくなる、というパターンの繰り返しでした。
ワークや問題集だと、まず最初に何の文法を学ぶのか説明があって、設問ごとにパターン化された問題をいくつか解いていきます。
例えば「to不定詞を用いて解きなさい」だと、ひたすら(to)+(動詞の原形)を機械的に入れていけば正解になるわけです。
その次のページには「〜ing形にしなさい」と、動名詞の問題があり、これもひたすら動をingに変えていけば正解になるわけです。
ところがテスト本番では、「この問題はto不定詞を用いた文法の問題です。」など書かれていません。to不定詞にするのか、ing形にするのか、それともどちらでもないのか、自分で判別しないといけないわけです。
しかしその問題の種類を区別できる域には達していないため、試験が始まりいざ問題を解こうとしたとき、「これ何だっけ?」と迷うのです。
その迷った状態を「緊張して頭が真っ白になった。」と勘違いをしているのです。
つまりテストで良い点数がとれるかどうかは「種類を区別できているかどうか」なんです。
だからこそテストの前の段階で様々なパターンの問題をシャッフルさせた「テスト向けの問題」つまり「区別する練習」をこなす必要があるわけです。いわゆる「ごちゃ混ぜ問題」での演習が必要になるということです。テストはごちゃ混ぜですから、混ぜた問題をやることで、自分で状況判断する術を身につけなければなりません。
ただし、こういったごちゃ混ぜテストを生徒さんが自分で作ることはなかなか容易ではありません。ですので、そういった定期テストのための問題判別トレーニング用テスト(中テストみたいなものでしょうか)は我々プロの家庭教師が用意してあげるわけです。
そしてその判別トレーニングの積み重ねがあってはじめて本番のテストで自信を持って解くことができるのです。だいぶ区別できるようになってきた!といったような「自信」が身につけば、多少の緊張も楽しめるのではないでしょうか。
私はテストで点がとれない生徒さんを担当するとき、真っ先にこの「ごちゃ混ぜ」と「区別」を意識させます。みなさん気がついているようでそうでもないんです。単元ごと「ある程度、なんとなく」できているからこそ気がつきにくいのかもしれません。
経験上、平均点前後(40点〜65点くらい)で伸び悩んでいる生徒さんは、基本的に「ごちゃ混ぜ問題の演習」だけで成績アップできると思います。
②1ケタ〜30点くらいの点数で苦手意識のある生徒さんの「緊張」への対処法
こちらも結論からズバッと言います。
それは「緊張」ではなく、大半が「問題の出来る出来ないの区別ができないことへの焦り」です。
どれなら自分でも出来て、どれが手も足も出ない(やっていない)問題なのか、探すトレーニングさえしてあげれば、「あ!これは僕でも出来る問題だ!」と気づいたり見分けることができるようになります。つまり適切なトレーニングさえすれば対処できるのです。
ただし、1ケタ〜30点くらいの点数の生徒さんの場合、ワークや問題集をひととおりやろうとしても、理解ができなくて解けない問題がかなりあるかと思います。
こういった場合、①のケースのようなワークで区別するトレーニングではなく、別の適した方法をとります。
それは、「テスト前に配られるテスト対策プリント」だけ、を徹底してやることです。
あるいはテスト範囲の用紙に記載があるプリントでも構いません。とにかく、ワークとは別で先生が作ったりしたプリントを使ってそこだけは確実に理解できるようにします。そして他の「やっていない問題、出来ない問題」とごちゃ混ぜにしたテストを作り、出来る問題をそこから探す練習をするわけです。
たくさん問題が並んでいて、そこから、『これは出来る問題!』と見分けることができれば、1ケタは20点になれるかもしれないし、20点は38点くらいにはなれるかもしれません。こういう方法でやったら何点上がった、という経験が自信にもつながります。
以上、テスト問題の種類を区別すれば緊張がなくなる、テスト問題の出来る出来ないが見分けられれば緊張がなくなる、というお話でした。
続いては
2 テクニック面です。
テクニック面でのアドバイスとしては答案用紙対策がまず重要です。テストで緊張してパニックになる場合、答案用紙の写し間違いがかなりの確率で発生してしまいます。
そうならないよう普段の授業では知識、技能系の問題(中学受験だと計算と一行問題、中学の定期テストだと単元独特のワード問題と計算系問題)を集めたものを時間内で取り組むべきです。そのなかに本人が手も足も出ない問題をわざと組み込みます。解けない問題を序盤に入れることで『緊張』『頭が真っ白』になった状態からの次の対処法を具体的に指示していくわけです。例えば解けない問題の問題番号に☆マークをして、答案用紙にも☆マーク。答案用紙に写し間違いやズレが生じないようになる、など。(答案用紙の☆マークを最後に消すトレーニングもします。)
次のステップは混合させて対応できるようにすることです。中学受験だと基本+応用問題、中学の定期テストや実力テストだと知識、技能系の問題と見方考え方の応用も混じったテスト問題を作成します。まず知識、技能系の問題番号をチェックさせて、答案用紙も囲みを入れます。先にそこだけをやらせてから見直し(写し間違いがないか)を確認させます。そのあとで応用にとりかかる手順です。つまり解く順番と答案用紙に書き写す作業のルーティンを作るわけです。
最後に
3 メンタル面
プレッシャー面=家庭内での何気ない親の言葉が実は本人に(本人も無意識に)プレッシャーを与えていたということがあります。例えば親が「テスト本番になるとどうして緊張しちゃうのかなぁ」と発するケースです。この「テスト本番」という考え方をなくしましょう。『本番』=ミスしたら失敗になる。失敗したらもう終わりだ、という思考を親が子供に与えてしまっていることで余計なプレッシャーを与えている可能性があります。テストや入試は人生の通過点であって最終関門ではありません。ババやママもテストでこんなミスしたことあるよ、入試でこんなにやらかしちゃったよ、みたいに本人の心理的負担を減らす会話を日常的に行ってみてはどうでしょうか。
緊張はあって当然です。むしろ人は緊張することで力を発揮できるのです。緊張すること=頭が真っ白になること、という考えを訂正していき、緊張はしてよいし、みんなしているんだ、みんな頭が真っ白にもなるし、そうなったときどう対処するかをトレーニングしていこうね、と話してみてください。
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